存続する企業は、身の丈を意識する
業績が好調な時期に、さらなる成長を目指すことも大切ですが、経営者が描く成長戦略は単年度の経営成績(=業績)のみでなく、キャッシュフローを意識した経営、財政状態を中長期的に意識した経営が必要となります。
事業の多角化、多店舗展開、機械装置等の設備投資や入れ替え等々、好調時には、いまこそ積極的に打って出るべきでは、と考える場面もあるでしょう。こういう場面では、そのすべてを自己資金で賄えるケースは少なく、金融機関等からの融資による資金調達で拡張路線に邁進することが多いでしょう。しかしながら、将来の業績は不確定でありますし、不測の事態により社内の資金が流出する事象が起こり得ないとも限りません。好事魔多し。経営者は、好調時にも積極性と堅実で保守的な判断のバランスが必要ではないでしょうか。
法人の創業から4~10年で倒産が一番多い原因は、経営者が創業時の情熱・理念などを維持できないから、との分析があります。創業したての頃は、金もなく、人も不足し、経験もなく、取引先もなく、高邁な理念や情熱だけが唯一会社を支える原動力になります。やがて、経験を重ね、実績を積み上げていく中で、法人はスキルや体力を身につけていきます。会社が右肩上がりの成長を始めるのではこのころからです。しかし、会社が成長するにつれ、充足感を得るとともに、プライドや名声欲がチラチラと頭をもたげてくることも多々あります。そうした事柄にこだわりはじめると、最も大切な、創業時の情熱を失い始めます。現場から遠ざかり、それまでに身に付けた経験やスキルに頼った経営を行います。
しかし、ある時点で、経験やスキルを得るための研鑽をとめてしまったら…。過去の経験やスキルで通用する期間はそう長くはないでしょう。時流不適合となり、法人は姿を消すこととなります。会社を存続させるためには、創業時の情熱を維持しつつ、経験やスキルを積み上げ続け、積極性・大胆さと謙虚さ・堅実さという、一見するとトレードオフとなるものを併せ持つことが必要といえましょう。